大学日本語教員養成課程研究協議会(以下,大養協)は,日本および海外の高等教育機関における,第二言語としての日本語教育に携わる教員の養成課程を対象とし,その向上に関心を持つ者を対象とした諸所の活動を行っています。
大養協が養成課程に関わる研究の促進等を行う上で,養成課程を修了した者の活躍の場に関する情報を,把握しそして継続的に情報の分析を続けることによる情報の集積が必要であると考え,日本語教育に関わる実態調査を行うことといたしました。養成課程を修了した者が将来仕事をする現場であることも意識し,教育の質にかかわる情報に加え,待遇の改善に寄与するための情報も対象として調査を行います。
【調査開始の背景】
大養協が調査を行うことについて,その背景についてご説明いたします。
教育再生実行会議の諸提言,対日直接投資推進会議での議論,さらに2030年以降の日本の教育を見据えた「第3期教育振興基本計画」策定に向けての審議経過報告など,現在の日本語教育を取り巻く状況は大きく変化しています。
養成した日本語教員が活躍する日本語教育機関についても変化があります。平成28年には「日本語教育機関の告示基準」が策定されました。ここでは,養成課程の内容について,「日本語教育機関の告示基準解釈指針」に関する指針が示されています。
また,日本語教員の活躍は,日本語教育機関にとどまらず,小学校や中学校などの義務教育の場でも求められ始めています。平成29年1月に文部科学省初等中等教育局から出された通知「教員採用等の改善に係る取組について」は,公立学校に在籍する日本語指導が必要な児童生徒数の増加等への対応充実方策の1つとして,大学で日本語教育などに関する専門的な教育を受けた者や,外国人児童生徒等教育に関係する経験を積んだ者について,特別免許状制度の積極的な活用を前提に採用に際し考慮することを求めています。この内容は,昨年6月,文部科学省がとりまとめた「学校における外国人児童生徒に対する教育支援に対する充実方策について」の提言内容に加え,国内での外国人に対する日本語教育に従事した経験も採用に際して考慮の対象としていること注目したいと思います。
併せて,この通知の中では,「青年海外協力隊や国際交流基金を通じて派遣された日本語専門家としての実績,海外の日本人学校等での勤務経験など国際的な活動経験を有する者」など,日本語教育に携わってきた人材の採用にも言及しています。日本語教育に対する需要は社会的広がりを見せています。この様な新たな社会的要請も視野に入れ,現在,国語分科会日本語教育小委員会で,日本語教育人材の養成・研修の在り方が検討されていることはすでにご存知のことと思います。
一方,教員を高度専門職として位置付けるため,その育成を大学院段階に移行する方針を文科省は打ち出しています(中教審「教員の養成・採用・研修について~論点整理~」2014年)。日本語教員養成課程についても養成する人材が備える資質能力を保証することが今後ますます必要になります。
日本語教育の将来像を想定して,社会の要請に対応できる人材の育成を目指す必要があります。そのためにも,日本語教育機関をはじめ,その他の場面において必要とされる日本語教育の実情を調査し把握したうえで,日本語教員養成・研修の在り方を検討し,ひいては日本語教員の活動の場の拡充,待遇の改善に資することができるよう,大養協は調査を行うこととしました。
実態を把握するためには多面的かつ継続的な調査が必要です。まずは,日本語教育を行う個人を対象とした調査を実施いたします。個別の調査の依頼文および調査概要等については,下記のリンク先にあるアンケートシートに記載いたしました。
本調査を大養協が行う目的についてご理解いただき,ご協力いただける方は,ぜひ以下のリンクより回答にご協力ください。
ご協力の程,よろしくお願い申し上げます。
大学日本語教員養成課程研究協議会
代表理事 木村哲也
https://goo.gl/forms/1RUPchtzKn30II4H3