大養協

「大学日本語教員養成課程研究協議会」のホームページです

概要

設立経緯

「大学日本語教員養成課程研究協議会」が発足したのは1991年11月のことですから、すでに四半世紀がたち、当時の状況を知る方も少なくなりました。

そこで『日本語教育』86号別冊に徳川宗賢先生が書かれた文章を参考に、事務局としてまとめてみました。

1.大養協発足に至る背景

1960年代に入ると、戦後の荒廃状態から復興を成し遂げ、徐々に経済発展の軌道に乗り始めた日本は、オリンピックや万博を開催するなど世界的に再び認められる存在となってきました。

そうした状況の中、1964年に文部省調査局から発表された「日本語教育の在り方」に「日本語教授者の育成と研修を行うことが必要である」と示されて以来、技術協力の拡充強化とともに日本語教育充実のために日本語教員養成体制充実の声が徐々に高まっていきました。1976年には文化庁から「日本語教員に必要な資質・能力とその向上策について」が報告され、そこでは資格や学位の付与について検討することが述べられています。

このような流れが具体化する段階に入るのは、1983年8月の「21 世紀への留学生政策に関する提言」、翌年6月の「21 世紀への留学生政策の展開について」によって先進諸国並みの留学生受け入れを目指す、いわゆる「留学生10万人計画」が示されてからです。

文部省の「日本語教育施策の推進に関する調査研究会」は、1985年5月に「日本語教員の養成について」という報告書を出しました。そこでは2000年に必要な日本語教員数を2万5千人と想定し、計画的な日本語教員養成機関の整備・充実を図る必要があるとされました。当時の養成機関は、その教育内容や水準、養成期間などがまちまちだったことから、量的・質的な面の整備・充実を図るために「標準的な教育内容」(ガイドラインと呼ばれることが多い)を示しました。

こうした流れに沿って、1985年に東京外国語大学と筑波大学に、翌1986年に大阪大学と広島大学に、日本語教員養成課程(いずれも主専攻の学科等)が新設されました。また、1987年4月には「日本語教員検定制度について」という報告も出され、「標準的な教育内容」に対応し、それをさらに詳しくした「出題範囲」も示されました。

2.大養協の誕生

上記の流れを受けて、1988年に国立国語研究所日本語教育センターでは「4年生大学における日本語教員養成をめぐる研究連絡協議会」を発足させ、養成課程を設置してまもない大学を中心に全国18校(国立9,私立9)から担当者が参加しました。

この協議会は1990年まで継続して開催され、その研究成果は「4年生大学における日本語教員養成の現状」(1991年3月)としてまとめられました。そこで議論された内容は次のようなものでした。

①標準的な教育内容はこのままでよいか。

②教員はどのように組織されるべきか。

③実習はどのように行われるべきか。

④課程修了生の進路をどう考えるべきか。

⑤大学の教員養成と検定試験の関係はどのように考えられるべきか。検定試験は副専攻レベルとされているが、それ以上のレベルの試験は必要ないか。

⑥教員養成とされているが、教職課程認定はありうるか。

⑦大学院についてどう考えるべきか。

1990年11月の研究連絡協議会を閉幕するにあたって、このまま解散するのは惜しい、教員養成にあたる大学は18校に限られるわけではない、各大学は共通の問題を抱えており、1年に1度ぐらいは情報交換し、協力し合うことが望ましいということになり、任意団体としての「大学日本語教員養成課程研究協議会(略称・大養協)」が発足することになりました。これによって揺籃期にあった各大学の日本語教員養成課程を充実させ、その地位を確固としたものにすることを目指したのでした。

3.今後の大養協の在り方

日本語教員養成課程が大学に設置されてから約30年が経過しようとしている現在、各養成課程もそれぞれの方針の下に運営され、それなりに安定しているとも言えます。しかしながら、抱えている問題は解決されたとは言えません。特に卒業生の進路と待遇は今も大きな課題となっています。

また、日本語教員に求められるものや活躍する場は、時代とともに変化しています。特に1990年の「出入国管理及び難民認定法」の改正は、「生活者日本語教育」を必要とする人々を増加させ、さらに「年少者日本語教育」のニーズを生みだし、JSL日本語教育に対応できる日本語教員の養成が求められるようになりました。

このように、日本語教員養成はめまぐるしく変化する時代の状況に対応するために、関係者の間で常に情報と意見を交換しながら、研究を重ねていかなければなりません。文化庁や文部科学省、あるいは日本語教育学会等の関係団体、さらには日本語学校との連携も重要になってきています。

大養協は、今後とも会員の皆様方の教育・研究活動を支援していくことができる組織でありたいと考えております。            (文責:山本忠行、2017年11月)

参考文献

徳川宗賢(1995)「展望・日本語教員養成と日本語教育能力検定試験」『日本語教育』86号別冊, pp.22-37

佐治圭三・中川良雄(2000)「大学日本語教員養成課程研究協議会(大養協)」『日本語教育年鑑2000年版』, pp.77-80

会則

2022年度理事一覧

名称 大学日本語教員養成課程研究協議会
略称 大養協(だいようきょう)
代表理事 鎌田 美千子(東京大学)
副代表理事 岡本 能里子(東京国際大学)
阿部 新(東京外国語大学)
理事
北海道・東北
伊藤 美紀(北海道教育大学)
左治木 敦子(国際教養大学)
関東
尹智鉉(中央大学)
西村 美保(清泉女子大学)
山本 弘子(カイ日本語スクール)
瀬尾 匡輝(茨城大学)
中部・関西
深澤 のぞみ(元金沢大学)
藤田 裕一郎(朝日大学)
門脇 薫(摂南大学)
中国・四国
山下 直子(香川大学)
佐藤 智照(島根大学)
九州・沖縄
水戸 貴久(別府溝部学園短期大学)
馬場 良二(元熊本県立大学)
監事
山本 忠行(創価大学)
副田 恵理子(藤女子大学)
事務局 福田 倫子(文教大学) <事務局長>
高橋 恵利子(防衛大学校)
五十嵐 小優粒(中部学院大学)
所在地 〒501-3993 岐阜県関市桐ヶ丘二丁目一番地 中部学院大学留学生別科 五十嵐小優粒
電話 0575-24-2766(中部学院大学留学生別科 五十嵐小優粒宛)
メールアドレス daiyojimu@gmail.com
設立 1991年
活動概要 日本語教師養成課程を持つ大学の担当教員・各大学の留学生センターの教員・日本語学校の教員・関連分野の大学院生等を中心として,情報交流・共同研究を行う。
活動内容 ・シンポジウムの開催(年2回:5月・10月 原則として日本語教育学会全国大会の前日の金曜日)
・大養協ニューズレターの発行(年2回:4月・9月)
・大養協論集の発行(年1回:3月)
会計年度 4月1日~ 3月31日
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。